『火(心・小腸)の不調』の可能性があります。 あまり暑いところにいたり、喜びすぎたりすると心小腸系を悪くしやすくなります。悪くすると汗がでやすくなり血管を浮き出しやく、舌を赤くして苦いものを好んだりして、夏に体調を崩しやすくなります。 苦味は余分な熱を清し、沖縄地方で親しまれているゴーヤ(苦瓜)は暑い夏、身体を冷やす食材として欠かせないものなのです。また、苦味は利尿に働きます。その代表的なものがお茶で、のどの渇きをとめ頭をはっきりさせます。西洋医学では、血液ポンプとして考えられている心臓ですが、東洋医学における心は、生命全体の司令塔として、精神活動や思考活動などの大脳機能や中枢神経系の機能もその役割に含まれています。動悸、不整脈、胸内苦悶、胸痛、貧血、手足の冷え、息切れなどは心の異常から来る症状です。舌がもつれて言葉がうまくでない発語障害や食物の味がわからない味覚障害、不眠、多夢、記憶力の低下、判断力の低下もも心の変調によるものです。
赤い食べ物は、血液をサラサラにする効果が高いものが多くあります。にんじん、トマト、イチゴ、すいか、小豆などの赤みのある食べ物や豚の心臓などが心の不調を整えてくれます。火の不調に有効なエッセンシャルオイルは、アンジェリカ、イランイラン、ジャスミン、スパイクナード、ネロリ、パルマローザ、メリッサ、ラベンダー、レモングラス、ローズ、ローズマリー、ローレルです。火の不調(心・小腸経)によい薬膳(食材)は、以下の通りです。
(寒い季節や身体が冷えている時にとるとよい温熱性の食材) もち米、らっきょう、パセリ、うど、かぶら、つくし、わらび、ふき、杏、棗、当帰、竜眼肉、バター、紅茶、酒
(平常時にとるとよい平性の食材) 小麦、葛、蓮の実、グレープフルーツ、牛・豚の心臓、鶏卵、牛乳
(暑い季節や身体がほてっている時にとるとよい寒涼性の食材) ひえ、にがうり、セロリ、レタス、レンコン、ひじき、コーヒー、緑茶、羊 、レバー、ゆり根
「心」は、五行では、「火」に属します。中医学では、「心」といえば、 西洋医学でいう心臓と全く同一の意味では、ありません。 勿論、西洋医学の心臓の機能としての循環の原動力としてのポンプ役を担っていますが、 同時に意識や精神活動、つまり西洋医学で言えば、 脳の働きに関係する部分も「心」の働きとしてとらえることが出来ます。 間接的に睡眠の仕組みとも関係します。「心血」は、心が安まる状態を指し、「心血虚」となると、 心血不足から不安感が強まり、不眠、浅眠、多夢となります。 心血虚の代表的エキス剤には、加味帰脾湯などがあります。
「心」は、「小腸」との関係が深く、「心」の異常が「小腸」に及ぶと、口内炎や尿が濃い、 残尿感や排尿時の灼熱感など、「小腸」の機能と関係する症状が出ます。 ここでの中医学でいう「小腸」の考え方は、西洋医学の小腸と意を異にし、尿の生成と関連しています。 五行の考え方に従うと、「火」である「心」は、 色では、「紅」、味では、「苦」、情志では、「喜」と関係が深いとされます。 喜びの気持ちがこころをときめかすことから、心と喜との関係が説明できると思います。 「心」の機能が異常になると、動悸、顔色が悪い、手足が冷える、 立ちくらみなどの循環器症状が出現するほかに、先ほど触れましたように心血虚状態から焦燥感、 驚きやすい、などの症状が出現したり、睡眠が浅い、不眠、夢を多く見るなどの睡眠障害がみられます。 舌の痛みやびらん、あるいは舌が硬直したり、言語障害など、舌にみられる異常の中には、 「心」と関連しているものが多くあります。
1.血脈を主る 血脈は、血液が運行する通路です。「心は血脈を主る」とは、血液を推動して脈中に運行させ、身体各部を滋養するという心の機能を説明したものです。血脈を主るという心の機能は、心気の作用により推動されます。心気が旺盛であれば、血液はたえまなく脈管中を運行し、血中の栄養物質は臓腑・組織・器官および四肢百骸にうまく輸送されます。逆に、心気が不足して血液の推動か弱くなると、顔色がすぐれなかったり、脈が細弱となります。またこのために血行に障害が生じると、顔や唇が青紫(チアノーゼ状)になり、脈が細濇となることもあります。これらの考えにもとづくと、吐血・衄・胸痺・心悸などの心・血・脈系統の疾患に対しては、心を病位として治療すればよいことになります。
2.神志を主る 「心は神志を主る」といわれていますが、また「心は神を蔵す」とか、「心は神明を主る」ともいわれます。これは心に精神・意識・思惟活動を主宰する機能があることを説明したものです。「神」には次のような広義と狭義の二通りの意味があります。広義の「神」とは、人体の生命活動の外的な現れを指します。例えば、人体の形象および顔色・眼光・言語の応答・身体の動きの状態などは、すべてこの広義の「神」の範囲にはいります。また狭義の「神」とは、精神・意識・思惟活動を指しています。心の機能が正常であれば,精神は充実し、意識や思惟もしっかりしています。精神や意識・思惟活動の異常は、心の機能失調と考えられますが、この場合、不眠・多夢・気持ちが落ち着かないなどの状態になり、うわごとをいったり、狂躁の状態になることもあります。あるいは反応が鈍くなったり、健忘・精神萎靡となったり、昏睡・人事不省になることもあります。さらにいえば「心は神志を主る」という機能と、「心は血脈を主る」という機能を分けて考えることはできません。血液は神志活動を担う基礎物質ですし、心に血脈を主るという機能があるからこそ、心は神志を主ることができるのです。心の「血脈を主る」という機能に異常が生じると、神志面での変化かおこりやすい、ということになります。したがって臨床上、ある種の神志異常に対しては、血分の側面から治療することが多くあります。
1.喜は心の志 「喜は心の志」とは、心の生理機能と精神情緒の「喜」との関係をいったものです。臓象学説では、怒・喜・思・憂・恐を五志と称しており、これらはそれぞれ特定の臓と関係が深いとされます。五志は、外界の事物事象から受ける印象よりおこる情緒の変化ですが、中医学では情緒の変化は五臓の生理機能により生じると考えられています。一般的にいうと、「喜」は人体に対して良性の刺激を与える情緒で、心の「血脈を主る」などの生理機能に対してプラスに作用します。しかしこれが過度になると、かえって心神を損傷することもあります。
2.汗は心の液 津液が陽気の作用を受けて玄府(汗孔)から流れ出たとき、その液体は汗となります。汗の排泄は、また衛気の腠理を開閉する機能とも関係があります。例えば、腠埋が開くと汗は排泄され、腠理が閉じていると無汗となります。汗は津液から化生したもので、血と津液とは源を同じくしています。発汗は心の機能を反映することがあるため「汗は心の液」といわれています。心気虚となると自汗がおこり、心陽虚となると汗がしたたるように出ます。したがって臨床上、汗の異常を治療するときには、多くの場合、心の機能を調節します。
3.体は脈に合し、華は顔にある 脈とは血脈のことです。心は「脈に合す」とは、全身の血脈の機能が心に帰属していることをいったものです。華とは色彩、光沢のことで、「華は顔にある」とは、心の生理機能の状態が、顔面部の色彩、光沢の変化から判ることを説明しています。頭顔面部には血脈が集中していて、心気が旺盛であれば、血脈が充足するため、顔面部の血色はよい状態に保たれます。逆に、心気が不足すると顔色は晄白となり、血虚の場合は顔色が青白く艶がなくり、血瘀の場合には、顔色は青紫色になります。
4.舌に開竅する 舌は心の状態を反映するため、「心は舌に開竅する」といわれています。また舌は「心の苗」であるともいわれています。舌には味覚の識別と言語を発するという二種の機能がありますが、これらの舌の機能は、心の「血脈を主る」機能と、「神志を主る」機能と関係があります。したがって心の生理機能に異常が生じると、味覚の変化や舌強(舌のこわばり、言語障害)などが現れやすくなります。
「心」の状態が、外から目でうかがえる場所は、舌で、特に舌の先に「心」の状態が反映されます。 舌の情報は、「心」だけではなく、全身の情報を手に入れることができ、 東洋医学の診断をする上でとても大切な場所です。舌診では、舌の形、色を見、次に舌苔の性状、色を判別します。
1.舌の形 全体にぼてっとして大きい感じを受けるものを「胖大」といいます。 舌の周りがガタガタになっているのは、歯の跡がついたもので「歯痕」といいます。 舌がむくんで口の中でふくれた状態が長く続いたために歯の形がついたもので、「胖大」と同じような意味を持っています。どちらも脾虚(脾の働きが悪いため、 食欲が低下したり、気が不足する状態)、湿盛(余剰の水分がある状態、痰飲ともいいます。)、 気虚(気が不足する状態で、疲れやすいなどの症状が出現します。) 反対に舌が痩せて薄いものは、血虚(血の滋潤作用の不足で、皮膚の乾燥、目がかすみや不眠など)、 陰虚(津液不足のことで、空咳、のどのいがらさ、足の火照りなど)などを示します。 舌に裂け目があるものをれつもん「烈紋」といって、 病的には、熱が盛んで陰液の消耗が激しい陰虚や血虚を示します。
2.舌の色 淡い感じや白っぽいのは、陽虚、気虚、血虚などがみられます。 「淡紅」と表現されるほんのりした赤さが正常とされ、陰陽のバランスがとれた状態です。 紅さが強くみられるものは、熱証や「陰虚火旺」と呼ばれる陰分が不足して、 相対的に陽気が強くなって熱を帯びた状態です。もっと赤味が強い「絳」と呼ばれるものは、 熱が盛んで熱邪が内部に深く侵入しているものをさします。紫色が認められるものは、 血お(血液がよどんで、流れの悪い状態)の存在を示します。 紫色が、舌全体にみられるものや部分的に局在してみられる場合(お斑)があります。
3.舌苔 舌の表面には、うっすらと白い苔が生えているのが普通です。 この舌苔は、体の状態によって変化し、東洋医学の診断に重要な手がかりになります。 苔の厚さ、湿り具合、色を観察します。正常は、白い薄い苔で適度に潤いがあります。 厚い苔は、病邪の勢いが強いことを示します。通常の苔の厚さが厚くなっても、 顆粒状に苔が集合しておりますが、苔が融合してべたっとした状態になることがあります。 この舌苔の異常のことを「じ苔」といいます。 じ苔は、湿濁や痰飲といった陰液過剰状態(日本漢方では、水毒といいます。)や 食積(食べ過ぎで消化しきれない状態)など、体の内側に余り物が沢山ある状態を示しております。 こういった舌をみたら、食べ物や飲み物の摂り過ぎかどうかをチェックする必要があります。 摂り過ぎがあまりなくても 苔が見られる人がいますが、通常の食事でも負担になり、 消化しきれない体質で、脾虚の存在が考えられ、六君子湯などの漢方薬の助けが必要となります。 苔が殆どみられない「無苔」や部分的に剥がれてしまっている「剥苔」は、陰液の不足や気虚を示します。 舌全体が乾いたものは「燥」で、津液不足や病邪の性質が熱や燥に変化したことを意味します。 舌の表面が透明な液体で覆われて過度に湿潤した状態を「滑」といい、湿痰や寒湿を示します。 舌苔の色は、白、黄、黒などに変化します。白は、寒や湿、黄は、熱と関連しています。 黄色の舌苔には、清熱作用のある黄連解毒湯などを用います。