人間は「気・血・水」という3つの要素から成り立っていると考えられています。身体のどの器官も皮膚も髪もすべては一つ一つの細胞の寄せ集めでしかなく、その細胞は「気・血・水」でできています。「気・血・水」は、それぞれに密接に係わり合い、そのうちひとつでもバランスを崩すと他にも影響を与え、様々な症状を引き起こす原因となると考えられています。「気」は、目には見えないけれども、全身を動かす根本的な力、エネルギーのことです。異常が起こると、イライラや気分の高ぶり、不眠などの症状につながります。「気」はインドのアーユルヴェーダやタイ伝統医学では「プラーナ」と言います。「血」は、単に血液そのものを示すだけでなく、その循環作用も含んだ意味です。異常が起こると、血が滞った「お血」や月経不順、貧血などに繋がります。「水」は、人間の身体の水分のうち、血液以外のものをさします。胃液、腸液、リンパ液、汗、涙、唾液などを総称したものです。異常が起こると、むくみや排尿障害などに繋がります。東洋医学では「気」「血」「水」の3つの要素が体内を循環することで、健康が保たれていると考えます。この3つの要素はバランスが大切で、どれか1つが多すぎても少なすぎても身体のバランスを崩してしまいます。
「気・血・水」が乱れる要因は、四季の移り変わり、環境の変化、生活習慣・食習慣の乱れ、ストレスなど様々あります。100年前と比べ私たちをとりまく環境は大きく変化しました。経済の発展、医学の進歩に伴い、平均寿命が長くなるとともに、新たな病気も増えてきました。例えば、原因のわからない不調、いわゆる不定愁訴は、なかなか完治が難しいと言われています。だからこそ、増加する病気や不調に対して、「病気の症状があらわれてから治療を始める」のではなく、「自己回復力を高めて、病気の症状が出てこない体をつくる」という考えが注目されています。
「気・血・水」に関してアプローチを行うには、まず、それぞれの「気」「血」「水」が不足している状態なのか、多すぎることで滞っている状態なのかを探っていくことから始めます。「気虚」は、気が不足している状態です。病気やストレスなどにより気が消耗すると気虚となり、体の抵抗力が落ちてしまいます。気虚を感じたら、消化がよく体を温める食べ物や休養を十分にとることが大切です。消化を助けるかぼちゃ、しょうが、ねぎやスタミナのつく肉類、にんにく、うなぎがオススメです。胃腸に負担をかけないことが大切で、栄養があっても脂っこいものは避けましょう。「気滞」は、ストレスや疲労が重なることで、気がのどや胸そして頭などに滞ると息苦しさやイライラを引き起こす状態のことをいいます。気滞を感じたら、気の流れを良くするハーブや、ストレスを解消するための休憩時間を生活にとり入れることが必要です。気滞を補う食材は、ミント、セリ、大根、玉ねぎ、ピーマン、グレープフルーツ、サケなどです。
「血虚」は、「血」が不足した状態です。エネルギー不足となり、顔色が悪くなる、立ちくらみを起こすなどの症状が出ます。血虚を感じたら、貧血を改善するビタミン類の多い野菜、レバーなど「血」をつくるものを積極的に食べましょう。血虚を補う食材は、鶏のレバー、にんじん、ほうれん草、黒豆、イカ、うなぎ、サケ、マグロ、牛肉、鶏卵などです。「血滞」は、「血」が滞った状態のことです。冷えや便秘、ホルモンバランスの乱れにつながります。血滞を感じたら、香辛料を食事に取り入れ、軽い運動で血行を促し、まずは体を温めることが大切です。「血」を巡らせる食べ物は、納豆、玉ねぎ、なす、にら、青魚、うなぎ、サケ、牛肉、黒砂糖、酢など。玉ねぎなどの香りある野菜や青魚は「血」を動かします。
「水虚」は、「水」が不足した状態のことです。胃の不調や過労により起こるとされ、肌荒れやカサカサ唇につながります。水虚を感じたら、食事に、水分を補う果物や野菜を取り入れましょう。水虚を補う食材は、トマト、アスパラガス、きゅうり、ほうれん草、豆腐などです。「水滞」は、水が滞っている状態のことです。むくみや下痢などを招くほか、水滞が呼吸器に現れると咳、お腹に現れると食欲不振につながることもあります。水滞を感じたら、水分の取りすぎや冷えを避け、適度に運動をしましょう。水滞を補う食材は、あずき、大根、梅、りんご、とうもろこしなどです。 |